ろう者のリアリティー／ぼくが生きてる、ふたつの世界（日）

映画「コーダ」についての考察

耳の聞こえない両親を持つ子供、つまり「コーダ」という言葉をご存知でしょうか？ この映画は、五十嵐大氏の自伝的エッセーを原作にしており、呉美保監督が9年ぶりに手がけた長編映画です。

主演の吉沢亮が耳の聞こえない両親のもとで育つ息子を演じ、母親役を忍足亜希子が務めています。この作品の魅力について詳しく見ていきましょう。

主人公の成長と葛藤

主人公、大は耳の聞こえない両親を愛し、手話を通じてコミュニケーションをとります。しかし、成長するにつれて、彼は自分の家族が周囲とは異なることや、偏見に直面することに気がつきます。

特に中学に入ると、反抗期も重なり、高校受験に失敗した際にはその責任を母に押し付けてしまいます。この部分は、多くの人が共感できるのではないでしょうか。

上京と新たな出会い

大が上京し、働き始めることで、彼はさまざまな人々と出会います。特に、ろう者と知り合うことで、彼の信念や価値観は変化していきます。

前は自分の親を不幸だと思っていた大が、彼らの強さや美しさを再認識することになる過程を見ることで、観客も心を打たれるでしょう。

吉沢亮の演技の深さ

中学生からの大を演じる吉沢亮の演技は見事です。彼の端正な顔が、母親を拒絶するシーンでは冷酷さを絶妙に表現しています。

呉監督は、吉沢の演技に隠れた「美しくない何か」に注目しており、その言葉に応えるような振る舞いが印象的です。

リアリティーの追求

今作では、ろう者の役を全てろう者の俳優が演じています。これはリアリティーを追求する上で欠かせない要素です。

作品全体に漂うリアリティーは、他の作品ではなかなか味わえないものです。

受賞歴と映画の意義

映画「コーダ　あいのうた」は、2022年の米アカデミー賞で、トロイ・コッツァーが男性ろう者として初めて助演男優賞を受賞し、作品賞や脚色賞など、合計3部門でオスカーを獲得しています。

これは、映画の重要性を示しており、ろう者の俳優が活躍する場が少ない日本において、このような作品が生まれたことには特別な意義があります。

まとめ: 感じることの大切さ

映画「コーダ」は、耳の聞こえない両親を持つことの意味や、それに伴う喜び、悩みを深く描写しています。

観ることで多くの人が感じるものがあると思います。家族の絆や理解、そして多様性について再考させられる作品です。

毎週日曜日に更新されるこのコラムで、さらなる映画の魅力やメッセージについて考察していきますので、お楽しみにしてください。